100円のコーラを1000円で売る方法 3
シリーズ完結編のテーマは、「現状維持を破壊して、新たな顧客と市場を創り出す」ことである。
既存の市場に対して、まったく新しいアプローチでイノベーションを起こす。既存顧客だけに目を向けるのではなく、「潜在顧客」を掘り起こすことだ。
たとえばiPhone
電話・音楽・PCを一体化させた、まったく新しいデバイス(スマートフォン)。世界を変えた製品の代表格だ。アップルは元々iMacやiPodといった自社製品があるのに、それらを破壊する製品を自ら創り出してしまう。他社にやられるのを待つのではなく、自ら過去の栄光を乗り越えていった。
アップルの凄いところは、単なるハード(デバイス)を売るだけでなく、ソフト(iOS/iCloud)でがっちりユーザーを押さえたことだ。iPhoneやMac、AppleWatchなど様々なデバイスが同じソフトウェアで繋がっているためとても便利で使いやすい。ゆえに、世界中にアップル信者を作り出し、囲い込むことができた。
この点で言えば、GAFAのすべてに共通することだ。
GoogleやFacebookは圧倒的なサービスの利便性を「無料」で提供することで、一気に世界シェアを奪った。Amazonは自前のロジスティックスを完備することで効率化を進め、圧倒的な優位性を持つことができた。
いずれにしても、各国に合わせてローカライズをするのではなく、グローバルスタンダードを作り上げたこと。この点は、日本のガラパゴス製品と対比されるところだろう。
この本のストーリーで言えば、日本の会計ソフトの分野に、世界中で使われている黒船が襲いかかってくる。無料で使えるクラウド会計サービスだ。
今まで未開拓だった個人事業主や零細企業に無料でサービスを提供し、圧倒的なユーザー数を獲得する。そして、機能は徐々に追加していき、どんどん使いやすくしていく。無料で使える代わりに、広告が表示されるのだが、表示されるのはいつも購入している商材で、かつ、安い商品を提案してくれるので、逆にありがたい機能だ。ユーザーは表示される広告企業から物を購入する。なので、マネタイズとしては購入してもらった際にアフィリエイト収入が入るという構造だ。さらに有料で24時間対応のサポート窓口を設置している。フリーミアムとアフィリエイトのミックスだ。
現実の世界にあるのは、freeeやマネーフォワードのようにフリーミアムクラウド会計ソフトだが、この製品はそれに近い感じだと思う。
そして、その黒船に対抗すべく、日本の競合2社が合併するわけだが、1+1=2では意味がない。1+1=3以上にならないと成功の可能性は低い。
Googleは2006年、まだ設立2年のYouTubeを16億5000ドル(約1800億円)で買収した。そして翌2007年には、ディスプレイ広告大手のDoubleClickを31億ドル(約3400億円)で買収した。
Googleは検索連動型の広告で急成長していたが、ディスプレイ広告は持っていなかったので、まるまる買収してしまったということだ。そこに巨額の資金を注ぎ込むわけだが、Googleにはその後の世界が見えていたということだ。言わずもがな、YouTubeは世界一の動画配信プラットフォームに成長した。
このシリーズを通して言えることは、「企業の目的とは、顧客の創造である」というP・F・ドラッカーの言葉に尽きる。
顧客を創るということは、目に見えているニーズやウォンツに応えることではなく、顧客すらも見えていない「潜在的」なニーズを開拓することだ。
それをつかみ取ることはとても難しく険しい道のりだが、時の革命者ほそれを成し遂げている。
世界を変えるようなイノベーションは、一般人では到底無理ゲーなわけで、我々一般人はもっと身近なことで考えていけば良いと思う。
新しい顧客を創造すること。いまの仕事の延長線上で考えてみることはとても大事なことだ。