裏のハローワーク
これは10年以上前に刊行された本なので、今では当てはまらない仕事もあるが、いくつかウラの仕事をまとめてみた。
マグロ漁船乗組員
マグロ漁船はとにかくハードだ。1年以上も海の上で生活することもそうだが、肉体的にもかなりの重労働だ。はえ縄という、網で釣り上げていく漁法で、1日20時間に及ぶ労働になることもある。
網に指でも引っ掛けようものならすぐに指が飛んでいく。応急処置しかできない船上での大怪我は命取りになることがある。
ちなみに、マグロ漁より短期間で稼げるのがカニ漁だ。ただ危険度も増す。海がシケている冬の時期が漁期であり、もし船が転覆したら命は無い。
あと、日本の海域でロシアの密漁は結構当たり前にやっているとのこと。
治験バイト
新薬の治験は、いまでこそコロナウイルスでフィーチャーされているが、昔から大事な役割を担ってきた。リスクによって報酬額が変わってくる。ただ、あくまでボランティア扱いなので、賃金ではなく「謝礼」として支払われる。
楽してお金が稼げるイメージがあるが、入院するタイプの治験は暇でしょうがないらしい。
そして一番ツラいのが、とにかく採血が多いこと。血液の数値は治験の重要なデータなので致し方ない。
出版ブローカー
一般的な出版社ではなく、ウラの出版社。
お得意先はほぼ宗教団体かマルチビジネスをやっている団体である。通常であれば出版など出来ない(審査が通らない)ジャンルの出版を請け負う。
宗教本であれば、信者は皆必ず買うため売上は堅い。マルチビジネスもしかり。
原発作業員
原発といえばアンタッチャブルな印象があるが、そこで作業する人たちは、下請けの下請けの下請けといった具合に、何社も間に入っているため大分中抜きされている。それでも、作業はごくごく簡単な整備や清掃なので、誰でも出来るような仕事で日給1万円はもらえる。
放射線を浴びるといっても目に見えないから、平気な人は平気で、けっこう割の良い仕事くらいにしか思っていない。
ただ、一部ではヤクザ絡みの話がある。ホームレスに声をかけ、送り込むみたいなことも。
鍵師
鍵師になる国家資格は存在しない。専門学校などで学び店を構えるケースが多い。中には、学ぶだけ学んで空き巣をやる人もいる。それは明らかな犯罪者である。
歌舞伎町の鍵師への依頼は特殊な例が多い。ヤクザや警察、窃盗団らしきグループからの依頼も多い。
結構、裏の裏というか、人間のあらゆるシーンに出くわす事がある。覚醒剤に溺れた彼氏の部屋を開けて欲しいとか、ひきこもりの子供の部屋を開けて欲しいとか。
鍵師とは、人が隠している部分に触れる仕事だ。だからこそ信用が何より必要。裏を返せば、すぐに犯罪者にもなりえる危ない仕事だ。
新興宗教団体信者
宗教はほんと怖い。心をすべて持っていかれる。側から見ると何で入るの?と思うけど、当の本人は信じきっているからどうにもならない。
朝から晩まで活動に従事し、保障されているのは2食の食事のみ。めちゃくちゃ売り上げたとしてもインセンティブは無し。
信者はカモにされているのに気づかない。ある意味シャブ漬けにしているようなもの。
産業処理業者
本来、産業廃棄物は埋め立てる前に中間処理(焼却)をやる必要があるが、費用が掛かるため、それを省いてどんどん埋めていく。いわゆる不法投棄だ。それも、山奥とかじゃバレる危険性があるため、自社の敷地内に埋めていく。
1万トンで4億円、10万トンで40億円。中間処理をしないためボロ儲け。これだけ大きなお金が動くということは、やはりヤクザ絡みになってくる。
とは言え、もう敷地が足りなくなってきている。今まで処理もされずに埋められた産廃はかなりの量だ。
運び屋
海外からドラッグやマリファナを持ち込む運び屋。税関を無事に通過するには「いかに怪しまれないか」である。身なりもスーツを着、ビジネスマン風にする。もちろん、隠し場所もかなり巧妙にする。ネックレスの石をくり抜いて中に詰めたり、スニーカーのつま先に細工して詰めたり。
あと、リスクを減らすなら郵送が最適。空き家の部屋番号を送り先にして、後日取りに行く。
総会屋
株主総会で、わざとイチャモンつけて長引かせたり、逆に、シャンシャン総会と言って、異議無しと連呼してスムーズに終わらせる。つまり株主総会をコントロールする。
目的は金。もちろん直接的に受け取るわけにいかないから、何かの購入をしてもらう。例えば、観葉植物のリースや、海の家の利用券など。だいたいヤクザのフロント企業が行う。総務部へ出向けば、相手も察して担当者が出てくる。
今でこそ目立ったことはしないが、昔はよく結構居た。
飛田のホステス
場所は大阪の飛田新地。そこは現代の遊郭。小さな店が軒を連ね、その中に着物などで着飾った遊女が座っている。幻想的な雰囲気である。まぁ言ってみれば本番アリの風俗街。
飛田新地は法律上は飲食扱いになっている。名目上はお客さんには飲み物を提供して、その後は自由恋愛という形でサービスを受ける。
あまりに目立つ通りで露骨なため、いまは鳴りを潜めてしまったのかな。
詐欺師
実はアイデア勝負のクリエイティビティな仕事。使い古された手ではなく常に新しい手法を考えている。
例えば、ニセ育毛剤の販売。市販の育毛剤を10倍ほどに薄めて商品化する。それを薄毛に悩んでいる男性に広告する。新聞の三行広告に「薄毛対策の最終兵器 今なら1本4800円」とか。これがよく売れリピーターも多いとのこと。
また、詐欺師を騙す詐欺師もいる。詐欺を働きたい人向けに、架空携帯や架空口座を売るというものだ。で、騙された方は警察にも届けられない。出す為に架空口座を買ったのだが、騙されたとは。
夜逃げ屋
夜逃げをする人はワケありだ。借金絡みか犯罪絡み、そして家族連れが多い。1人なら簡単に疾走できるが家族が居るとなかなか出来ないからだ。
夜逃げ屋自体もリスクは高い。だからリスクと報酬のバランスが取れていない案件は受けない。
うまく逃げられたとしても、その人は今後まったく別の人物として生きていく必要がある。
自分の過去を誰かに喋ってしまったりすると、いずれ情報は出回る。
そんな人生は歩みたくないものだ。
マリファナ栽培
ネットで種を購入し、マンションで育てる。マリファナの種自体は合法で、発芽させた瞬間に違法となる。(あまり知られていないが、七味唐辛子の中に入っている麻の実はマリファナの種)
つまり種を取り寄せるだけでは逮捕されない。
海外では合法のところもあるから、意識が薄い人は違法行為の意識は無いのだろう。
ヤミ金業者
平成16年1月からヤミ金融対策法が施行され、かなりの行動を制限された。ただ、090金融(事務所を持たず携帯のみで金貸し業を行なっている業者)は、そもそも完全な違法でやっている。
トイチ(10日で1割)やヒイチ(1日1割)、トサン(10日で3割)やトゴ(10日で5割)と、とんでもない利子で貸し付ける。なのでめちゃくちゃ高速で逆の複利効果が効いてあっという間に借金は膨れ上がる。返せなくなった行先は、女は風俗、男はマグロ漁船かトンネル工事など超絶肉体労働。
臓器ブローカー
漫画や映画の世界では、「腎臓売るか」とか言う脅し文句があるが、本当にそんな事になる人はいるのか。
逆の、臓器を欲しがっている人はたくさんいる。つまり、何らかの病気や事故で臓器移植を希望している人だ。需要は多いが供給が圧倒的に不足しているのが現状だ。
ちなみに、日本では1997年に臓器移植法が施行され可能になったが、それ以前は主にフィリピンで移植手術をしていた。(ジャンボ鶴田は肝臓移植手術を受けたが出血多量のショック症状で帰らぬ人となった)
アジアの貧しい国では、腎臓ひとつ10万円とかで売られている。売った人はそのお金をもとに商売を始めたり借金を返したりする。
日本人の感覚では考えられないだろうが、世界にはそんな事をせざるを得ない人たちが居る。
まとめ
オモテがあればウラがある。
スーツを着て定時に出社して、興味の持てない仕事をして食べていくのも1つの生き方。しかし世の中は、そうではない仕事も多数存在する。
大通りからは見えない裏路地がある。そんな世界の話。