ビジネスモデル思考法 ストーリーで読む「儲ける仕組み」のつくり方
落ち目のスポーツシューズメーカーが、新たなビジネスモデルを作り出し逆転経営をしていく物語。
従来の売り方は、世の中のトレンドに合わせて商品を投入し、ブームが去ればセールをして売り切る。そしてまた次のトレンドを探し求める。
世界的なメガブランドが巨額の広告をかけ新しいトレンドを作り出している中、中堅メーカーは同じ土俵で戦っていてはジリ貧になるばかり。そしていずれ淘汰される。
なので、商品単体で勝負するのではなく、ソリューション(事業)全体を変革していかなければ生き残れない。
そこで、まずはターゲット層を明確にし、その人たちの「顧客価値」=「顧客の用事」は何なのかを明言化すること。そして、それを解決するためのアプローチを様々な角度で考える。一過性のもので終わるのではなく、サスティナブル(持続可能)なビジネスモデルを設計する。
ターゲット層は、40〜50代の女性。子育てや家事、そして仕事をしながら忙しい日々を送っている。運動なんてする暇がない。でもおばさん体型になるのは嫌だ。楽して痩せたいと思っている。
そんな人たちに向けて、普段履いているだけで身体がシェイプされるシューズを提案する。ソール部分に仕掛けがあり、あえて不安定な状態にすることで身体の様々な箇所が勝手に鍛えられる。そんなシューズだ。
ただし値段は通常のシューズの1.5倍。買ってもらうにはハードルが高い。なので、比べる対象を他のシューズではなく、「スポーツジム」や「ヨガ」などの通い系フィットネスを対比させることで、割安感を打ち出す。あるいは、通販などのダイエット器具なども対照とさせる。
さらにそれだけでなく、「価値保証」として30日間の返品に対して「全額返金」をつける。
こうなれば買わない理由がなくなる。
そして、この全額返金制を行使するためには、会員登録(ID)をする必要があり、これによりすべての顧客データが収集できることになる。
これの何が良いかというと、例えば返品されたお客さんに、何が不満だったのかを聞くことができ、後の商品開発に活かせる「生の声」が取れることだ。もし自社のプロダクトでカバーできないことでも、その顧客のデータを外販すれば新たな収益源となる。ダイエットに関するサービス事業者は数多おり、顧客の生の声は欲しいはずだ。
このビジネスモデルは、まずはターゲットを「潜在層」に絞ることでブルーオーシャンを狙う。そして価格を下げるのではなく「価値」を上げ、比較対象をまったく別の業種に当て、それらの顧客を取り込む戦略。
課金ポイントも、シューズの購入時と後のビッグデータ外販時と複数用意する。そしてそのデータを商品開発に活かし更なるイノベーションを生み出す。
この本の中に挙げられていた様々な企業のビジネスモデルも参考になる。
原価90%で販売しても赤字にならない。会員費がまるまる利益になるというコストコ。
バリスタコーヒーやカミソリの刃やプリンターのインクなど、本体販売で儲けるのではなくその後の継続的な課金で儲ける企業。
ソーシャルゲームやDropboxなど、一定までは無料で使えて、さらに使いたいユーザー向けに課金する「フリーミアム」
あるいは、ずっと無料にして圧倒的な利便性を提供してユーザーを集め、企業の広告収入で課金するGoogleやFacebook。あとテレビも同様のビジネスモデルだ。
ビジネスモデルとは、事業計画とは違い、もっと深いところで仕組み化すること。「顧客価値」を追求することと、「課金ポイント」を設計することの、両面を考える必要がある。
ビジネスモデルには終わりはない。