100円のコーラを1000円で売る方法
マーケティングをストーリー仕立てで解説する良書である。続編があり3部シリーズで完結する。
まずは初回のテーマ「企業の目的は、顧客の創造である」
商品開発をするにあたって、顧客の要望を聞き入れ過ぎると何も特徴のない製品となり、他社製品との差別化も図れず、価格競争に頼らざるを得なくなる。そのため、マーケットリーダー(市場シェアNO1)が圧勝するだけとなる。
顧客の要望が100%だとすると、それを超える120%、150%の満足度(付加価値)を目指す。つまり、顧客が気づいていない価値を見出すことだ。
たとえばキシリトールガム。
ただ美味しさを追求するガムならすでに市場に溢れかえっているが、キシリトールガムは、まったく違う価値を生み出した。
キシリトールはフィンランド生まれの虫歯になりにくい甘味料だ。従来のガムのように、味や香りで勝負するのはやめて、「虫歯予防」と言う新しい要素を加えて新市場を開いた。「歯医者さんがお薦めするガム」というプロモーションをするために歯医者へ交渉するわけだが、当初は上手くいかなかった。そこで、歯医者さんにとってもメリットとなる新しいビジネスモデルを提案した。それは、「虫歯にならないために歯医者に行く」という「予防歯科」という概念を持ち込み、日本中の潜在顧客層を広げたことだ。
これで、歯医者さんも新たな顧客を創出でき、キシリトールもヒットし、Win-Winの関係が築けた。
街の電器屋さんの例
大手家電量販店が乱立する中、街の小さな電器屋さんが生存しているのはなぜか?
それは、量販店がカバーできていない「高齢者層」を取り込んでいるから。価格は高くてもいいから、取り付けや修理などのアフターサービスを丁寧にやってくれるところは生き残る。量販店は価格は安く品揃えも充実しているが、おじいさんおばあさんの細かな要望までは対応できない。だから街の電器屋さんの存在価値がある。
100円のコーラを1000円で売る
リッツカールトンのルームサービスでコーラを頼むと、最適な温度に冷やされ、ライムと氷がついた、この上なく美味しい状態でシルバーの盆に載ったコーラがグラスで運ばれてくる。そしてゴージャスでくつろげる素晴らしい部屋で飲むという体験。
中身は100円のコーラと同じ原液だが、そこで飲む満足度は数十倍上がり、価格以上の価値を感じるということだ。
価格を下げずに価値を上げるという典型例だ。
これらの例で言えることは、「顧客が望んでいて、競合他社が提供できない、自社が提供できる価値」であることだ。この価値を「バリュープロポジション」という。
ここを目指して商品開発をすることが重要だ。