トヨトミの逆襲
ほとんど実話のトヨタ自動車の小説。気鋭の経済記者が、覆面作家となり作った物語。
人名、社名は偽名だが、実物をすぐに連想できる。
トヨタ自動車第11代の社長である豊田章男社長が主役。過去3代続いた同族以外のサラリーマン社長から継いだいわゆるお坊ちゃん社長である。
が、メディア露出は多く愛されるキャラクターもあり人気や知名度はある。
そして、社長就任から立て続けに苦難が訪れる。リーマンショック、円高、アメリカでの大規模リコール、東日本大地震、タイの洪水など。
その修羅場をくぐってきた章男社長だが、現在のトヨタは売上絶好調である。
しかし、今まさに、自動車業界にイノベーションが起ころうとしている。
CASEは、自動車業界に必ず訪れるキーワードだ。
CASE=Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリング)、Electric(電気自動車)
トヨタ自動車は、プリウスというガソリンと電気のハイブリッド車をリリースし、世界中を席巻した。だが、今世の中がEV(電気自動車)一色の中、FCV(燃料電池自動車)で勝負したが、それが外れてしまい、結果的にEVの開発に周回遅れとなってしまった。
そんなトヨタの逆襲を描いていくわけだが、どこまでがフィクションでどこから実話か分からない。
ソフトバンクとの共同出資で設立した会社や、その目的。アメリカと中国に太いパイプを持つ孫正義に寄り添う。中国とアメリカ双方に工場を建設して販路拡大していくため、トランプの機嫌を損ねないようなうまい付き合い方など。
世界で販路を拡大していくには、当局へのロビー活動が必須となる。キーマンとなる政治家へは多くの献金を渡す。
大企業ならではの戦略。
そして、EVの肝である「航続距離」を延ばすための電池開発合戦。テスラが一歩リードしているが、自動車業界のみならずIT企業らが参入している。まさにEV戦争。
一方で、EVになることで必要無くなるエンジンなど、これらに携わるサプライヤーはとんでもなく多い。それらに従事する従業員も何十万人といる。
彼らの仕事を奪っていくことになる。
これは時代の移り変わりとともに常にあることなので、仕方ない部分ではある。また違う業界に行きその技術を発揮すれば良い。これからはロケット開発が進んでいくかもしれない。
とにかく、いま世界一の自動車会社であるトヨタも、変革の時を迎えている。
エンジンや内燃機関はどう考えてもシュリンクしていく未来。脱酸素、カーボンニュートラルが世界中で叫ばれ、2030年までに何%にするとか目標を掲げている。
そんな中、EV化へは、自動車会社のみならずあらゆるプレイヤーが参戦している状態。
さらに、単に電気自動車に置き換わるだけではなく、所有するという概念すら無くなるかもしれない。自動運転&ライドシェアで単なる移動手段としての乗り物になるかもしれない。いや、そこに向かっている。
将来的には、移動手段としての車と、レースを楽しむための娯楽としての車と、二極化する未来が来るかもしれない。