気ままに本要約ブログ

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SDGsの不都合な真実「脱炭素」が世界を救うの大嘘

世界中で叫ばれている「SDGs」だが、とりわけ環境面においてはさまざまな「不都合な真実」が存在する。

特に「脱炭素」「EVシフト」「ESG投資」「再エネ」というキーワードには密接なつながりがある。

このあたりをまとめてみる。

 

脱炭素

まず、世界中の「脱炭素」の流れだが、その理由は「地球温暖化」にある。地球上の温度が上昇していて、そのせいで各国の様々な自然災害が巨大化している。日本で言えば台風や豪雨、アメリカで言えば(自然発火の)山火事。近年の自然災害規模は大きくなるばかり。

そのため、先進国が集まって「このままじゃヤバいよね」って言い始め「よし、将来の地球のために環境目標を決めよう」となり、気温上昇の大きな要因であるCO2の排出量を減らそうとなった。これが「パリ協定」である。

具体的な数値としては、産業革命前(18世紀)からの上昇温度を1.5度以下に抑えること。

そして、そのために「カーボンニュートラル」を目指す。先進国があと20年、途上国は30年かけてそこを目指そうと。(カーボンニュートラルとはCO2の排出量と吸収量を同じ量にすること)

 

EVシフト

その流れを受けて、自動車メーカーからは「EVシフト」宣言が次々とされ始めている。自動車はエンジンで燃料を燃やしCO2を排出しているが、これをCO2排出量ゼロの電気自動車(EV)にすると。

ただ、そこには世界の自動車メーカーの思惑がある。

欧米の自動車メーカーは、日本の内燃機関の性能(ハイブリッドも含む)には勝てない。だからEVシフトでゲームチェンジを狙っている。

もう一つの要因としてはテスラの躍進だ。自動車メーカーは相当な危機感を持っている。

しかしながら、フォルクスワーゲンゼネラルモーターズメルセデスも「脱エンジン宣言」をしたものの、実のところそれはコミットではなく目標に過ぎない。
あくまで「マーケットがそうなるならば」というエクスキューズを残している。
事実、EVシフトに一番積極的なワーゲンも新車販売の中でEV車はまだ5%程に過ぎない。

そもそも、すべてを電気自動車にするというのは現実的に考えて無理がある。そうなるとすべての車に大量のバッテリーを搭載する必要があるが、とてもじゃないがバッテリーの供給が追いつかない。需要に対して供給が追いつかないということは、価格が上がるということだ。そもそも電気自動車コストのの4割がバッテリーなので、バッテリーコストがイコール車両価格になってしまう。低所得者層は買えない価格になる。

そして、現状、バッテリーの原材料(ニッケル、リチウム、コバルト)は、仕入れ値が安い中国頼みになっている。

なぜ中国が安く製造出来るかというと、電力が安い上に、新疆ウイグル自治区などで奴隷のように低賃金で働かせて、且つ、廃棄の環境コストも負担しないで製造しているからである。

環境問題のためにEVシフト化するのに、環境に優しくない地区で生産されたものを使用するという状態が果たしてSDGs的にどうなのか。

 

ESG投資

しかし、なぜこんなにもEVシフトと叫んでいるのだろうか。

それは、世の中の投資家がこぞってESG投資に乗り出しているからだ。(ESGとは環境、社会、ガバナンスの略称)

いまや、ESGに配慮しない企業は投資対象にならないとして、マーケットが厳しい判断を下す傾向にある。つまり、ハイテクや再生エネルギー、電気自動車などの企業に投資が集中する一方で、石油、石炭、ガソリン車に関係する企業にはこれからはお金が集まらない。

このESG投資を背景に、自動車メーカーがこぞって「脱ガソリン宣言」をしているわけだ。

「脱炭素」には莫大なコストがかかるし、非効率的な生産活動にならざるを得ない。でもいまはそちらの方へお金が集まる。資本主義の考え方からは少しズレてしまっている状態。

投資の神様、ウォーレンバフェットは、「脱炭素には莫大なカネがかかり、それは政府の仕事。企業は株主利益を追求する存在」という指摘をしているのも頷ける。

 

再生可能エネルギー

「脱炭素」とは、つまり石炭、石油、天然ガスなどのエネルギーを排除して、太陽光、風力、水力などの自然エネルギーを活用していこうということ。

では、CO2を排出しない原子力は活用するの?

結局はこのような議論に行き着く。

なぜなら、自然エネルギー(再エネ)だけで電力をカバーすることは無理ゲーだからだ。

2020年8月にカリフォルニアで起きた停電がそれを物語っている。カリフォルニアは温暖化対策に熱心な州で、太陽光発電風力発電の導入を大きく進めている。そして火力発電を止めていた真夏の夜、停電が起きた。日没により太陽光発電量がほぼ無くなったにもかかわらず、熱波により冷房のため電力需要が落ちなかったからだ。本来は再エネ設備のバックアップのために火力発電設備を維持しておくべきなのに、それを止めていたからだ。

原発ゼロを掲げて再エネ導入に力を入れているドイツにおいても、実はバックアップのためにフランスの原発電力に頼っているという事実。

さらに、大きな問題として電力コストがあげられる。再エネは発電効率が悪いため、どうしても発電コストが高くなる。それはすなわち電気料金の高騰につながる。一般家庭はなんとかやりくり出来るかもしれないが、工場など製造業に与えるインパクトは計り知れない。生産コストがバカ上がりしてしまうため、結局電気料金の安い国へ工場を移すことになる。

ちなみに日本のエネルギー割合は、火力発電75%、再エネ22%、原子力3%である。原発36基のうち稼働しているのは10基のみ。電気代の25%は再エネ賦課金コストである。再エネを増やすということは国民の負担する電気代が増えるということだ。

 

まとめ

このように、世界的な「脱炭素」の流れには不都合な真実がたくさんある。「環境にやさしい」というと聞こえは良いが、そこには莫大なコストがかかるし、且つ、思いっきり非効率なのである。

資本主義社会において、この「環境問題」とどう付き合っていくべきか。

正直、超ムズイ課題だと思う。

とはいえ、いまは環境に配慮した企業でないとお金が集まらない。そういう資本主義になっている。

そりゃ、地球全体が再生可能エネルギーだけで生きていけるのならば、それはもちろん理想的な世界だ。でも、それはお花畑理論でありユートピアの世界だ。

日本の国益を考えるなら、トヨタハイブリッド車など、排ガスを極限まで抑えた技術をもっともっと世界にアピールして、政府も国連に働きかけて、お花畑論から現実論の話をしていくべきじゃないかと思う。中国なんかはまだ成長段階だから排出量はまだ増えると言い、火力発電設備も増設していくと宣言している。

日本のCO2排出量は世界の3%に過ぎない。中国は2025年までに排出量を10%増やす計画で、日本の排出量はこの増やす分と同等の量である。

そもそも世界のCO2排出量の大部分を占める中国とアメリカが大きく舵を切らない限り、この問題は解決しない。