気ままに本要約ブログ

本を読んでアウトプットすることではじめてインプットできる!自分自身の為と、ブログを読まれた方へ少しでも参考になれば良いかなと思い、気ままに書評を書いていきます。

メディアが報じない戦争のリアル

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、中国による台湾への侵攻もあり得るのではないかとメディアは報じている。その際、日本も巻き込まれるのではないか、アメリカは助けてくれるのか、など、大半の人は不安になっていると思う。では、ファクトやデータをもとにその可能性を紐解いてみる。

 

中国による台湾有事の可能性

マスコミでは、「近い将来中国は台湾に攻め込んで軍事占領し、武力による台湾統一をはたすに違いない」と報じている。しかし、科学的、合理的に考えれば、武力行使、とりわけ上陸作戦はあり得ないことが分かる。

まず、軍事の常識に「攻める側は守る側の3倍以上の兵力が必要」というのがある。さらに、陸続きではなく島国に海から上陸するとなると、その数はさらに必要となる。第二次世界大戦中の硫黄島の戦いやノルマンディー上陸作戦では、攻める側の兵力は5倍に達していた。また、どんな場所からでも上陸できるわけではなく、台湾でいえばすべての海岸線のうち、上陸に適した場所は10%ほどで、14か所しかない。台湾としては、この限られた上陸適地に部隊を集中でき、ミサイルの標的にもしやすい。つまり、上陸作戦は物理的に考えて不可能に近い。となれば、中国は空からのミサイル攻撃しか武力行使できない。しかし、これを行使するとアメリカとの全面戦争を招く危険が大きすぎて、中国が採用するとは到底思えない。

 

台湾の海上封鎖はあり得るか

1962年、ソ連アメリカの喉元であるキューバに核ミサイル基地を建設して始まった「キューバ危機」は、ケネディ大統領がキューバに対する「海上封鎖」を通告し、核ミサイルの即時撤去を要求した。ソ連の拒否でアメリカは海上封鎖に踏み切り、米ソの緊張は衝突寸前まで高まった。結局、ソ連が引き、世界大戦は回避されたという歴史がある。

中国がアメリカと同じように、台湾の海上封鎖をしたらどうなるか。台湾本島へ出入する船舶を封鎖線で臨検(停止させ強制的に立ち入り検査などをする)し、出る船を出さず、入る船を入れないようにする。その結果、台湾側が突破を断念したり、逆に、アメリカや日本の圧力で中国側が封鎖線を解いたりすれば軍事衝突は回避される。ところが、臨検現場で小競り合いなどが起こると、一気に軍事衝突に発展していく危険性がある。

 

中国はハイブリッド戦を追求する

武力で無理やり取り込むことはできなくても、台湾統一は中国の、いや習近平国家主席の悲願なので、必ずや何かしらの行動を起こすだろう。そして、現実的な手法として「ハイブリッド戦法」を繰り広げていく。これは、軍事力の行使も含むが、政治、経済、宗教、心理、文化、思想など、社会を構成するすべての要素を「兵器化する」ということで、つまり「何でもあり」の戦法だ。味方の戦闘意欲を掻き立て、敵の戦闘意欲を殺ぐ国内外の世論づくりで、新聞・雑誌・出版・ラジオ・テレビ・インターネットなどメディアが駆使される。

2014年のロシアによるクリミア併合の例でいうと、所属不明の武装集団が士気の低いウクライナ軍を駆逐し、ロシア寄りの住民の支持のもと、ロシアへの併合が「無血で」行われた。このように、中国も台湾の民心を中国寄りにするため、あらゆる手段を行使すると見なければならない。

 

日米同盟は強固な関係

戦後の日本はアメリカ以外に同盟を組む選択肢はなかった。戦後、米軍を中心とする連合国軍最高司令部(GHQ)に占領された日本は、アメリカ一国に占領されたも同然だった。北方領土を占領したソ連は、もっと領土を要求していたが、アメリカは拒否した。アメリカは日本と同じ資本主義国でもあるし、当時GHQが日本の非軍事化と民主化、そして経済復興を推進し、迅速に政策を打ち出した。そして、1950年から始まった朝鮮戦争により、在日米軍がすべて韓国へ派兵された為、自国を守る目的で自衛隊のもととなる警察予備隊が作られる。そして翌年、サンフランシスコ講和条約にて日本は独立を回復し、同時にアメリカと日米安全保障条約も調印された。ソ連など共産主義国の脅威に対して、今までずっとアメリカの核の傘に守られてきたのは、強固な日米同盟があったからこそだ。

 

アメリカにとって日本は最重要

日本にとってアメリカは、国の安全保障のために欠かせない存在だが、アメリカにとって日本はどれくらい大事なのか。アメリカにとっての日本の位置付けを企業に例えると、アメリカ本土を東京本社だとすれば、日本は大阪本社だ。その他の同盟国は支店や営業所にすぎない。実はそれくらい最重要である。それはなぜか。

それは地政学的にも日本は重要なポジションにあるからだ。もしアメリカが引くとなると、西太平洋とインド洋は中国やロシアに支配されてしまう。中国、ロシア、北朝鮮共産主義国が固まっているこの地域に対抗するには、日本の位置が死活的に重要である。とくに沖縄は、弾道ミサイルが届く位置としては、世界をほぼほぼカバー出来るくらいの好立地にある。もし日米同盟を解消したら、アメリカは世界のリーダーの座から滑り落ちるくらいのインパクトがある。

 

世界最高レベルのASW能力

それでは、日本は一方的にアメリカに守られているだけかというと、そんなことはない。もちろん、軍事力でいうと自衛隊は自国を守るだけの実力しかないが、部分的に見ると世界最高レベルの能力を備えている。それは、海上自衛隊のASW(対潜水艦戦)能力だ。ASWとは、簡単に言うと「海の中の戦い」であり、他国の艦艇や潜水艦の脅威に対して、常に監視し、攻撃力を備えておく能力だ。海自はこれが世界トップレベルにあるということだ。たとえば、中国海軍の艦艇が、東シナ海南シナ海から、日米に気づかれずに日本海・太平洋・インド洋へ出ることは、絶対に出来ない。こんなにもASWが強力な海域は、他に世界のどこにもない。また、海上自衛隊のASWは、アメリカの核戦略を支えているという一面もある。米太平洋艦隊の弾道ミサイル原潜8隻は、シアトルから北東太平洋にかけての海中を回っていて、これを外国が攻撃するほぼ唯一の手段は攻撃型原潜だ。そこで日本の海上自衛隊は、ロシアや中国の原潜を常時監視し、探知や追尾のためのデータを米海軍に提供している。つまり、弾道ミサイル原潜の生存性に大きく貢献しているのだ。

 

日本の核武装はあり得ない

たとえば、日本が日米同盟を解消して「武装中立」をした場合、一体どれくらいのコストがかかるのか。現在の日米同盟の維持コストは、ざっくり1兆7700億円で、防衛費全体で考えても年間5兆円だ。仮にすべてを自主防衛にすると、年間22〜23兆円かかる。なにしろ、日本周辺各地の兵力は陸軍だけでも、台湾9万人、韓国46万人、北朝鮮110万人、中国97万人、極東ロシア8万人といった人数だ。自衛隊の22万人ではまるで足りない。費用面だけみても、日米同盟がいかにコスパが良いかが分かる。

また、日本も核武装をすればよいのではないかという声もあるが、現実的にそれはあり得ない。まず、日本の軍事力を制限し、日本の軍事的な自力を否定してきたアメリカが、日本の核武装を許すはずがない。日本が核武装を目指すには、アメリカとの同盟を解消することになり、武装中立の道を歩むしかなくなる。それがいかに無謀なことか、小学生でもわかる。