気ままに本要約ブログ

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医療貧国ニッポン「より手厚く、より安く」が日本を滅ぼす

日本の医療を語る上でまず押さえておかなくてはいけないのは、このままでは「立ち行かなくなる」ということだ。

医療費の自己負担は3割(高齢者は1〜3割)で、あとは税金や勤め人の保険料から賄っている。安く受診できるとなれば、気軽に通えてしまう。とりわけ高齢者にとっては、病院はサロン状態だ。

一人あたりの年間医療費でみると、65歳未満では19万1900円なのに対し、65歳以上になると75万4200円と4倍に跳ね上がる。超高齢化社会の日本においては、医療費が逼迫する一方である。

なお、日本の国民皆保険がスタートしたのは1961年で、その当時、高齢者一人を支える現役世代は11.2人。しかし、2040年には一人の高齢者を1.5人の現役世代で支えなければならない。

医療費が安いから気軽に通えてしまう上に、病院側も、診療費を稼ぐために「念のため検査」をしたり、「不要な薬」を出したりする。そして検査入院させて病床を埋める。入院日数も長い。

こんなふうに、念のための不要な診療があふれかえっているから、雪だるま式に医療費が膨らむのだ。なぜそうなるのか?そう、医療費が安いからだ。自分で負担するのは1〜3割だけで、それ以外は他人のお金だと思えば得した気がする。保険料だけ納めて病院に行かないのは、損している気がして、自分も受診しなきゃ損みたいな力学が働いているのではないか。

また、日本の医療制度は「フリーアクセス制」により、患者自身が自由に病院を選べるシステムだ。これにより、病院やクリニックには競争原理が働く。つまり、不要だとわかっていても、薬を出さないということはない。「あのクリニックは薬を出してくれなかった」などと噂され、患者さん離れを起こしてしまうからだ。

あと、フリーアクセスにより、もう一つ問題がある。大病院の待ち時間が長くなることだ。その日に受診者がどれくらいやって来るのか、予測がつかないからだ。患者の方も、なんとなく大病院の方が安心だという「大病院志向」の人が多いためだ。

日本以外の先進国で採用しているのは、いわゆる「かかりつけ医」制度だ。それは、GP(ジェネラル・プラクティショナー)と呼ばれる、総合診療医だ。GP発症の国イギリスでは、居住する地域の診療所でGPに登録することが義務化されている。なので、体調が悪くなれば、まずはGPに診てもらい、その後GPの紹介で専門医療機関を受診する。この流れが欧米を中心に多くの国で行われている医療機関へのかかり方である。なお、自分のヘルスデータはすべてGPのところに届き、患者の予後の体調管理や薬の処方などもGPが行なっている。

では、日本はなぜこのような制度が採用できないかというと、民間医療機関の比率が多い(8割)からだ。そして、患者が自由に医療機関を選べるフリーアクセス制だからだ。まさに鶏と卵で、民間が多いからGP制がとれない。GP制がないから民間が多くなる。なお、欧米ではほとんどが国営医療機関なので、このようなシステムが可能なのだ。

さて、仕組み上、構造上、医療費がかさばることはわかったが、やはり一番重要なのが、一個人の「ヘルスリテラシー」だ。本来、自分の身体のことは自分が一番よくわかっているはずなのに、盲目的に医者の言うことを鵜呑みにするのは良くない。たとえば風邪をひいた時は、薬なんてなくても自然治療で治る。薬をもらいに行くために病院に行く必要はない。

日本人のヘルスリテラシーが低い理由は、手厚い医療が安価で受けられるという日本の国民皆保険があるからとも言える。これ自体は素晴らしい制度なのだが、しっかりとした財源が確保できていればこそだ。もうすでに逼迫している医療費だが、これからますます厳しくなる。

もしアメリカみたいに医療費が猛烈に高い場合、風邪でクリニックにかかるだけで数万円かかり、もし手術することになれば、100万単位の金額がかかるとなれば、今みたいに気軽に病院に行けないだろう。こうなれば、もっと予防医療に力を入れるだろう。日本は医療費が安いから、予防に対してインセンティブが働かない。

最後に、日本の長寿化による「2025年問題」というのがある。これは、団塊世代の始まりである1947年生まれの人たちが後期高齢者を迎えるため、医療費がいまよりもぐっと負担が増える。そして、医療技術の進歩により、平均寿命は今よりも延びるだろう。つまり、長生きするご老人の数がめちゃくちゃ増えるため、いまの国民皆保険制度ではやっていけなくなるということだ。当然、医療の自己負担率は上がり、保険負担率も上がるだろう。

すでに国費の3分の1を占める社会保障費が、これからますます必要となってくる。この大問題には、国民一人一人が向き合っていく必要がある。