気ままに本要約ブログ

本を読んでアウトプットすることではじめてインプットできる!自分自身の為と、ブログを読まれた方へ少しでも参考になれば良いかなと思い、気ままに書評を書いていきます。

スルガ銀行 かぼちゃの馬車事件

不動産業界を激震させた「かぼちゃの馬車」事件について詳細に語られている。まるで小説を読んでいるかのようなフィクションぽい内容だが、紛れもない事実。

 

実は僕も説明会を聞きに行った事があるし、すごく注目していた投資用シェアハウスだった。

幸いにも話は進まなかったので良かったが、いま考えるとゾッとする。

 

簡単に説明すると、上京したいと思っている地方の女性向けに作られたシェアハウスで、敷金礼金なしベッドとデスク付きの部屋が1棟14〜18部屋程度ある。

その物件費用は1億5千万〜2億円。

家賃は65000円とシェアハウスでは高め。

契約はサブリースで毎月の家賃収入は100万円、銀行への返済額が80万円。差額は20万円という仕組み。

 

運営会社「スマートライフ」は住居の提供以外に、仕事を紹介するという触れ込みで、大手人材紹介会社と連携しているとの事。

家賃以外にも人材紹介料が入るからサブリース(家賃保証)が出来るという内容。

 

例えば、想定年収300万円の仕事が決まれば、手数料30%で90万円となる。それを人材紹介会社と折半で45万円の利益となる。一人当たり45万円×14名で630万円となる。

確かに良いビジネスモデルだと思う。

 

ただし、「うまくいけば」の話だ。

 

実際には入居者も集まらないし、仕事も決まらない。そのビジネスモデルに関してはすでに破綻していた。

にも関わらず建てに建てまくって供給過剰状態を作っていた。後半は毎月50軒の建設ラッシュだった。

 

もともと不動産の実質価値の4割増くらいで売りつけていたので、その利益を関係する会社が分け合うという悪徳商法

オーナーへのサブリース代金は、家賃では全く賄えないので、建てた際の利益から捻出していたという、完全に「自転車操業」状態だった。

つまり、新規の建築が止まれば収支が回らなくなるという状態。

 

そして、ついにスルガ銀行から新規融資がストップし、スマートライフ社は行き詰まり、オーナーへのサブリース代金が払えないという事態へ。

 

その時すでにオーナーは800名を超え、物件は1000棟も建てていた。

もちろん、入居者が予定通り入っていたら順風満帆なのだが、実際の入居率は散々たるものだった。

 

オーナーは収入が途絶えたにも関わらず、毎月80万円の返済が残るという、絶体絶命の状態に陥った。

この状態を想像するといたたまれなくなる。

 

ここでこの本の主人公である冨谷氏が立ち上がる。オーナー説明会で自分のLINEQRコードを配って仲間を作っていった。

被害者同士繋がって情報共有と対処策を考えていった。

そして、運良く河合弁護士に出会い、スルガ銀行に立ち向かっていった。

 

この事件で一番の黒幕は、佐藤太治で、過去に同様の詐欺事件を起こしている。有名なのは「ビデオ安売王」というエロビデオ屋フランチャイズ展開だ。粗悪品のAVを焼き増ししてFCオーナーに売りつけて短期期間で大儲けしトンズラする。

今回のかぼちゃの馬車と同じ。

短期で利益を搾取して逃げる。

 

佐藤太治が粗悪の原因ではあるが、彼を追ったところで巨額のローン支払いは残る。

スマートライフや建築会社、販売会社らに訴訟を起こしたところで一人1000万円を取るのが関の山。

 

であれば、スルガ銀行に立ち向かい、代物弁済(返済チャラ)を目指すことにした。

訴訟を起こすと戦いの場が裁判所となり何年も何年も決着がつかず、かつ銀行側は有能な弁護士団をつけてくるから勝ち目は薄い。

であれば、白兵戦として、デモ活動や株を買って株主総会に出席して口撃、そしてメディアと世論を巻き込んで、銀行に圧力をかけていく戦術をとることにした。

 

関係した悪徳業者らには訴訟を起こすのではなく、とにかく内部情報を引き出すことに専念した。

 

そうした結果、スルガ銀行内で資料改ざんのリークが入ってくる。

融資をした横浜東口支店は、オーナーの預金残高や資産状況などを改ざんして融資申請していた。そして融資が下りれば業社より個人的にキックバックをもらっていた。

さらに融資に当たって定期預金やフリーローンを条件にしていた。これは銀行法違反である。

 

このスルガ銀行の不正情報がメディアに流れてテレビで多数取り上げられた。

被害者団は政治家にも訴えていたため、国会でもこの問題は取り上げられた。

一気に世論の風潮が変わり、スルガ銀行は株価も急落し窮地に陥っていく。

 

そこで被害者団は、株主総会スルガ銀行の岡野会長や社長らに口撃を仕掛け、風向きを変えることに成功した。

 

そして最終的に、スルガ銀行は代物弁済(借金チャラ)にすると言ってきた。

銀行相手に勝利した歴史的な快挙である。

 

見ているこっちもホッとしたし、スカッとした。

 

不動産オーナーは、多額の借金させられて物件を高値掴みさせられて、そこで出た利益を悪い奴らが分け合う。

そして収支が行き詰まれば銀行に返済するのはオーナーで、普段働いている会社員の給与から返済することに。

彼らは家族の将来のためを思って不動産投資を始めた人が多い。そんな彼らから金をむしり取る構図は良くない。ほんと悪魔のような悪徳商法だ。

 

このかぼちゃの馬車事件から学べることは、業者の言うことをまずは鵜呑みにしないこと。必ず良いことばかり言ってくるので、リスクを聞くこと、調べること。過去の実績数値を見せてもらうこと。

こういうのは大体、「早いもの勝ち」とか「順番待ち」だからとか言って購買意欲を煽ってくる。

不動産であれば物件価値(相場)を徹底的に調べる。この土地、この建物でこの値段は無いよねと、相場感を養うことが重要。

世の中うまい話は無いので、リスクとリターンは表裏一体。リターンが大きいならリスクも大きいもの。この大原則を忘れないようにしないといけない。

 

 

スルガ銀行 かぼちゃの馬車事件

スルガ銀行 かぼちゃの馬車事件