テレビが伝えない国際ニュースの真相
この本は、著者、茂木氏のエッジの効いた説明が分かりやすくて面白かった。
中国について
1949年に中華人民共和国となり、表向きは民主国家ですよとしておきながら、実際には共産党の独裁国家で北朝鮮と変わらない。
「裕福な独裁国家」が中国で、「貧乏な独裁国家」が北朝鮮である。
香港の自由を完全に奪ってしまった2020年6月の「国家安全維持法」や、2018年に国家主席の「任期を撤廃する」憲法改正など、習近平の独裁化が強固になっている。
国際社会においても、アフリカや南米、イタリアやギリシアに巨額の投資をして中国にズブズブの関係性を作っている。
中国国内においては、超監視社会で街中至る所に監視カメラがあり、ネット上でもすべてログを取られ、国民全員がスコアリングされている。国家の悪口など書き込めばスコアが下がり、色んな面で不利に働くようになる。
一見、超デジタル社会で便利な社会だと思われるが、独裁国家においての超監視社会は、人権は無視される。
正直、絶対に住みたくない。
そしてファーウェイやTikTok問題だが、これは中国の超デジタル国家による脅威である。
「サイバーセキュリティ法」というのがあり、中国企業に対して「企業が集めた顧客データは国家と共有せよ」というのが可能なので、政府が請求すれば企業はデータを渡さざるを得ない。
これやばいよね。そりゃ中国のIT企業は締め出されるわけだ。
アメリカが主導となり中国企業の締め出しを世界各国に呼びかけている。
日本は政府省庁内は禁止出来るが、民間へは強制力を発揮できないので、まだ家電量販店ではデカデカとファーウェイの広告が並んでいる。
そして、中国のこれからのシナリオで一つ考えられるのが、「中国分裂」である。
国民の貧富の差が激しく、超格差社会となっているが、富の再分配がうまくいかなくなった時に、「地方の人民解放軍のトップがそれぞれ国家を建国する」という軍閥割拠が勃発する可能性がある。
硬直した独裁国家には定期的に訪れる「革命」なのかもしれない。
韓国と北朝鮮について
韓国と北朝鮮とアメリカと中国と、そして日本との関係は複雑だ。
まずアメリカは、北朝鮮の核開発をやめなさいと言っているが、北朝鮮はやめない。アメリカはそれに対して経済制裁を継続する。
北朝鮮はアメリカに少し歩み寄りをした理由は、韓国から米軍を撤退させたいから。
一方韓国は、100%北朝鮮寄りの文在寅大統領のため、金正恩の言いなり。
でも、唯一の同盟国であるアメリカの目も気にしながらの立ち位置。日本に対しては韓国伝統の「反日」体制を崩さない。
中国は北朝鮮の核開発をやめなさいと。北朝鮮は中国に取り込まれたくないが故に「反中」の姿勢は崩さない。親中だった叔父や兄を暗殺した程だ。
東アジアの関係性って、アメリカと中国が対立しているからこそ複雑なんだな。
アメリカについて
アメリカは建国250年と若い国家なのだが、4年に1度の大統領選という制度はずっと変わらないため、その時代に合わせた新陳代謝が行われる事で世界一の大国になった。
ここ数年の大統領と時代の流れを見ると、剛腕ブッシュ大統領の任期終了間際にリーマンショックが起こり、金融機関を助けるために財政出動させた事で、弱者を切り捨てたとして非難され、民主党のオバマ大統領に期待を寄せられた。
オバマ大統領は演説はすごいが実行力が無かった。国民皆保険を作ろうとした「オバマケア」も、保険会社の猛烈な反対に屈して達成出来ず。
各国との核軍縮交渉もほとんど出来ず。
初の黒人大統領として期待された分、期待倒れ感が否めない。
そこでトランプが台頭して来たという流れ。アメリカ自国ファーストの国策、多くの白人労働者の雇用を作り出したこと。中国に貿易戦争を仕掛けたこと。色々目に見える政策を行ってきた。
ただ、2020年になりCOVID-19対策で甚大な被害を出してしまった事、白人警官が黒人男性に暴行をした事など、急激に民意を失っていったことで、今回民主党のバイデンさんが当選した。
イギリスとEU離脱について
まずイギリスは、もともと4つの国(イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ)だったが、イングランドが次々と統合していき、連合王国となった。
ただ、アイルランドだけは北側のみ統合した形(北アイルランド)で、これが後のEU離脱で問題となる。
イギリスは産業革命により19世紀までは世界の覇者であり、世界各国へ植民地を持っていた。
ただ、第二次世界大戦後に植民地を次々に引き渡すとともに世界の覇権をアメリカへ譲る形となった。
そこで、経済力を保つためにヨーロッパ統合(EU)への仲間入りをした格好。
EU加盟国同士では、関税がかからない自由貿易とパスポート不要で行き来できる移動の自由がある。
しかし、2020年1月にイギリスのEU離脱(ブレグジット)が正式に行われた。
離脱のきっかけは、ドイツを中心にEU諸国がアフリカや中東からの難民を受け入れていたが、それをイギリスにも要求してきた事。そしてもう一つは、通貨の問題。他の国はユーロに統一していたが、イギリスだけはポンドにこだわってきたこと。
これを、2016年当時のキャメロン首相が民意を問う国民投票を実施して、離脱派が過半数を「取ってしまった」という結果。
民意(国民の意思)は変えられない為、EUを離脱せざるを得なかった。
それにより、今後心配されるのは、アイルランドと北アイルランドに国境が出来てしまう事によりアイルランドの不満が高まる事。スコットランドのウイスキーに関税がかかり競争力を失う事。
もともとEU離脱反対派には北アイルランドとスコットランドの人が多かった。
イギリスのEU離脱は、イギリスにとってもEU諸国にとってもマイナスになる事が多いと言える。
イランとアメリカについて
もともと新米国家だったイランが反米に転換させたのが「イラン革命」
革命前のイランは石油をアメリカに輸出し莫大な利益を得ていたが、その富は一部に集中し国民に分配されなかった。国民の怒りに乗じて勢力を拡大したのが、イスラム教シーア派の法学者ホメイニ師で、国民を味方につけ大反乱を起こした。これがイラン革命。
その後のイランの政治体制は、国民の選挙で選ばれる「大統領」と、イスラム教シーア派の「最高指導者」である。
そして、軍隊に関しても二重構造で、大統領直轄なのが「国軍」、最高指導者直轄なのが「革命防衛隊」。この革命防衛隊の司令官ソレイマニが2020年1月にアメリカ軍に殺害された。
これにより一触即発の緊張状態となったが、幸い戦争は回避できた。
ソレイマニ司令官はなぜ殺害されたのか?
革命防衛隊は国内治安の為と、もう一つ目的があり、「イラン革命の精神を中東地域の国々に輸出すること」である。この海外工作をアメリカほテロの温床になっていると思っているため、行き過ぎた行動に対して制裁を下した格好。
革命防衛隊のもう一つの目的として、イスラエルのエルサレムを取り返すというのがある。
エルサレムはキリスト教、ユダヤ教、そしてイスラム教の聖地である為だ。そしてイスラエルはアメリカが支援している国でもある。
ここでもイラン対アメリカの対立関係がある。
以上、世界のニュースは見方を変えると非常に興味深くなる。各国それぞれ思惑が交差しているがなんとか均衡を保っている。
いまアメリカと中国がバッチバチだが、これからどういう勢力図になっていくのか予想がつかない。
日本は、今はアメリカの子分みたいな立ち位置だが、これかどうなっていくのか。
正直、なるようにしかならないのだけど、興味を持つことは悪いことじゃない。