おとなの教養2 私たちはいま、どこにいるのか?
池上彰氏の書籍、かなり多く本を出しているけど、今回初めて読んでみた。
まずは、池上流、ニュースや情報を整理し深く掘り下げて理解する方法として、
◼︎フローからストックへ
新聞やテレビ、ネットで目にするニュースは「フロー」。そこで引っかかる部分があれば本で徹底的に調べる。それが「ストック」である。
◼︎アウトプットを意識する
新聞や本を読む際、「もし、これを子供に説明するとしたらどうすればいいんだろう?」という問題意識をもって勉強すると面白いように頭に入ってくる。
アウトプットを意識してインプットし、実際にアウトプットしてみる。
やっぱりその意識は大事なんだなと再認識した。
この本では様々なテーマに沿って書かれているが、「AI」や「キャッシュレス」については他の書籍でインプットしているので、その他で気になった部分を抜粋する。
◼︎地政学について
各国の世界地図を見ると、その国からの見え方が分かる。そこには、国家間の対立の歴史、戦争や紛争の爪痕、国の考え方が表れる。
そもそも「極東」「中東」の呼び名とは、イギリスを世界地図の中心にして見た時の位置。だから日本は東の端っこ=「極東」、イラクやイラン、シリア辺りは中くらいの東=「中東」である。
「シーパワーとランドパワー」
シーパワー=「海洋国家」はイギリス、アメリカ、日本など。ランドパワー=「大陸国家」はドイツやフランス、ロシア、中国など。
中国の一帯一路構想とは、ランドパワーとシーパワーの両方を手に入れたいという表れ。
アジアや中東のさまざまな国に莫大な資金を融資して、港や橋、道路などのインフラ整備を進めている。借りた側の国々は、お金を返せなくなり、その結果、整備されたインフラを中国に奪われてしまう。これが中国の思惑。
北朝鮮の世界地図には、朝鮮半島がひとつになっていて、その首都はピョンヤンになっている。北朝鮮としてはすでに朝鮮半島は統一されている。
あと、アメリカと日本だけ真っ白で色分けされていない。国交を結んでいないから、北朝鮮はアメリカと日本を国家として認めていないという表れ。
中東では、覇権をめぐってサウジアラビアとイランが対立しているが、そこにアメリカのトランプ大統領が絡んでくる。
2018年に起きたサウジアラビアのカショギ記者の殺害事件だが、サウジアラビアのムハンマド皇太子の指示があった可能性が高いと言われている。(ムハンマド皇太子はサウジアラビアの改革を推し進めていたが、カショギ記者はその改革を批判していた人物)
本来アメリカは、ジャーナリストが殺害されたら、「真相究明する法律」があるが、トランプ大統領は真相究明に着手しなかった。サウジアラビアにはニューヨークの株式市場を買い支えてもらっているから、サウジアラビアとは友好な関係でいたいからだという。
最近のニュースでアメリカがイランに対して経済制裁を与えている事など、各国の友好関係と敵対関係に左右されているのだろうなと、そういう見方ができる。
◼︎ポピュリズムについて
イギリスのEU離脱の最大の理由は、ポーランド人の大量移民である。物価も賃金も安いポーランド人が、賃金の高いイギリスへこぞって出稼ぎに行くようになった。イギリス人がやりたがらないような農場での仕事も喜んでやるので、そういう面では良いのだが、イギリスの社会保障にタダ乗りされたり(イギリスでは医療費が無料)、イギリス人の仕事が奪われたり、給与水準が下がっていったりと、不満の声が上がるようになった。
アメリカの大統領選挙では、トランプの勝利の要因のひとつに、戦略的な選挙活動がある。カリフォルニア州など始めから負けると分かっている州はハナから捨てて、どっちに触れるか分からない州に集中してPRを行った。広告効果が分散化されるテレビCMよりもSNSで効果的にターゲット層にアプローチしたこと。
そして広い層に、特に低所得者層や年配層にも分かりやすいような端的なメッセージを発信して大衆を盛り上げていき勝利を呼び込んだ。いわゆる、ポピュリズムの典型。
イギリスのEU離脱も、トランプ大統領の勝利も、共通点は「ポピュリズム」であり「国民投票」の危うさである。冷静に考えると、「それは無いよね」ってことが現実となってしまう。
◼︎日本国憲法の改定について
安倍首相が改憲にこだわっている。第9条の改定。自衛隊を明記すること。
最後は国民投票になるので、この事は個々で考えておく必要があると思う。
自衛隊は自国を守るための軍隊の位置づけであり、その機能がある。この存在を憲法に明記することで将来起こりうる懸念点は何か?
例えば、自衛の領域を越えて他国を攻める可能性。アメリカの圧力により他国に派遣せざるを得ない可能性。
一方で、防衛力がないためにアメリカの言いなりにならざるを得ない今の状態が果たして良いのか。
これについて答えは無いのだろうが、国民投票となればどちらにしても「YES」「NO」を意思表示しないといけないので、難しい問題だとは思うが、考えておく必要はあるのでしょう。
おとなの教養 2―私たちはいま、どこにいるのか? (2) (NHK出版新書)
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2019/04/10
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